小箱にひそみし魔界の印

 で、青年が苦労義経して、どうにかこうにか箱をこじ開けると、ハラホロヒロハレといろんなものが飛び出してくるのだった。
 それはまるでクチャクチャの紙切れとか、シュレッターでコッパみじん切りになったなんかの切れ端とかで、一瞬だけ青年の顔は蒼白となる。
 まあ、その刹那、ゴミ箱をひっくり返したのよう、と表現してもまったく三億円ジャンボの連続当選ほどではあるまい(意味わかりにくい)。
 しかしよくよく見れば、これは稀代なる貴重な文書(もんじょ)、未来から発掘された考古的文献(勝手に想像)なのではある。しかも魔界から出すべき絵葉書や、なにやら小さい土産物も入っている。しかも箱自体にもいろんな未知なる場所を経由して、ここまで渡来したことを示す紙片が付着しているのだ。
 つまりこのひと箱を入手せしめただけでも、はるこんに来た怪、じゃなくて甲斐信玄があったというもの、とおじさんは軽く青年の肩をたたくと、彼はちいさく頷いた、とか。