好奇心を出迎える恐竜

 そしてやはり1975年の上野公園には、その時代のトレンドを表現した、といってもいいだろう新しい東京都美術館があった。近づくが一瞬どこが入り口かわからない。それは昨日書いたように、エントランスの構造が階段を下りるカタチを取っているからだ。しかしあるいはそれは旧東京都美術館の入れ口のように、まだ入り口としての存在を形式として備えているそれが多かった時代だったからなのかもしれない。入り口は形式としてのそれから機能としてのそれに変わろうとしていた、とはここで勝手に想像しておく。
 ここでまた話はさらに横道に逸れる。何年か前に上野の科学博物館に行ったことがあるが、そこもかつては階段を昇ると恐竜の骨格標本が迎えてくれるエントランスだったはずだが、その時はすでに階段を降りるカタチに変更されていて、かなりがっかりした記憶がある。裁判所などの権力や威厳の象徴であるアプローチはぜひこんなカタチにしてもらいたいが、博物館にはドキドキ感が必要なのではないだろうか。特に子供たちには。
 私にとっての科学博物館のイメージは、今でも好奇心を出迎えてくれたあの恐竜のままである。(続く)