十全なるショックアブソーバー

 もうかなり前のことで、ほとんど忘れてしまっているのだけれど、ほんとうは国立近代美術館のベーコン展に行ってきたことを書こうとして、それが昔の上の周辺の話に飛んでしまって、収拾がつかなくなったわけだった。
 あっそうそう、いま思い出した。美術館に入ろうとしたら、建物の前に消防車と救急車が停まっていた、なんてことまでは書いたのだった。
 いつもは金魚の何かみたいについてくるツレも、この日のベーコン展だけは、あの車にご厄介になるのは可哀そうなので、事前にどんな絵が並んでいるのかを見せて、「今回、私はパス」というお言葉をいただいた。だから一人でゆっくりと鑑賞することができるというわけだ。しめしめ。
 会場に入ると、会期末という割には、人の数はほぼ適量といった感じ。けっして少ない、というわけではないけれど、一枚一枚の絵の前に立って、じっくりと眺めることができるギリの量だろうか。
 数十年前に英国の肖像画展で、たったの一枚だけを観て、かなりの衝撃を受けたわけだけど、こちらもうまく具合に歳をとり、鈍感という名のショックアブソーバーを身に着けているわけだから、まあ、どんと来い、なのである。アレ、まだ始まらないじゃないか。(続く)