家の記憶 五

 たとえば同窓会での会話の決まり文句に、「まったく昔と変わっていないわね……みんな」などというのがある。リップサービステンコ盛りのその言葉にも、ほんの少しだけオマケのトッピングぐらいに、真実が含まれているように思う。
 しかしそれは、卒業後数年のそれならいざ知らず、半世紀かそこらのそれは残念ながら言葉というか思いの真実ではあっても、実際の真実とは違う。それはつまりこういうことだ。
 私たちはみごとに経年変化を刻んでいる顔面を中心とする画像を、いにしえの記憶のかつての様子に重ねて認識するのである。声は顔ほど歳を取らないから、会話をすれば、それに輪を掛ける。会話はもちろん昔話で、それが脳内で風景として変換されるとき、現前の実存はいつしか消え去り、かつての風景の中のそれと見間違うのである、なんて書いたら、怒られるかな。