家の記憶 六
そんな同窓会の懐かしきともがきの笑顔に似て、懐かしき風景も同じようなさまを見せる。
かつて住んでいた場所に何らかの機会を持って出かけても、その再訪の記憶はすぐにあやうくなっていき、やがてかつての濃い記憶の中に消えていく、そんな体験をしたことはないだろうか。
それはある人たちにとって苦しみを伴う。かつての風景が失われてしまったことの苦しみであると同時に、またそこを訪ねることが叶わないこと、あるいはすでに失われていることを理解しながらも、確認できずにいることで、風景そのものが苦痛を伴って脳裏に浮かぶのである。
それは病にも似ているという。そのことをタルコフスキーの「鏡」を観つつ、亡くなった伯母さんの家の記憶を辿ることで、ほんの少しだけわかったような気がする。