メビウスの夜 その六

 こんな感じでメビウスな夜を書き連ねてきたのだが、実際、その日にアルバム中のどの曲が演奏されたのか、中年老い易く、どんどんと確信が持てなくなってしまった。
 なので、新宿ピットイン&CD視聴の感想ってことで読んでくだはら、ほろ、ひれ、はれ(五十歳未満の方、ごめんなさい)。
 さて、曲目は「屍者の帝国」。
 これはもちろん伊藤計劃さん+円城塔さんのSF小説『屍者の帝国』に捧げられたもの。小説は近過去が舞台で、そこに有名な小説や映画などの登場人物が現れて、どっこい活躍するという物語なのだが、この曲も、その構図を踏襲して、まったく別の映画やなにやらをコラージュしつつ、似て非なる、ではなく、非にして似たる『屍者の帝国』を構築し、その帝国を西から東へ突進していくのである。バリトン・サックスは、まさにバリバリと未開の地を切り刻みつつ、進む。