五反田今昔ストーリー その二

 いつだったか、よく覚えていないのだが、大学の先輩が五反田に飲み屋を構えた。その名は「かな将」。
 彼は学校を卒業(したかなぁ)後に、やはり以前からアルバイトをしていた目黒の飲み屋で修業して、何年か後に、その隣の駅、五反田で店を開いたのである。
 ただこれだけの話だったら、何回か何かの帰りに寄ってみる、というあんばいだっただろう。事実、開店直後には何回か続けて通い、「一万円で三人が吐くまで飲める」ことをいいことに、気が付けばもう店には自分たちだけだったということが多々あったのだった。
 その安さと料理の確かさで、アフター5のサラリーマンの熱烈な支持を得て、4時半から営業開始のその店に、それこそアフター5に向かうと満員で入れないということもままあるとか。しかしコストパフーマンスよろしきこの店と、さらに五反田そのものと、それなりにディープな関係に陥るとは、開店当時には思いもよらなかったのである。