五反田今昔ストーリー その三

 というのも、某版元で働き出すと、作っている雑誌の校了作業を五反田にある印刷会社で行うこととなったのだ。
 しかも店の位置はちょうどいいあんばい。校了日は間違いなくその店の前を通ることになる。
 暮れ時、家路を急ぐサラリーマンの流れを遡り、印刷所の校正室に入って数時間後、すっかり夜の街となった五反田界隈に出でるオヤジには、そののれんを見過ごすことはできないのである。
 ただし好事魔多し、そういった楽しみを阻害する要因は意外と身近なところにあったのだった。