五反田今昔ストーリー その四

 その要因とは、すばり同僚である。彼はとにかく会社の金でただ飯を食うことを人生の生きがいにでもしているような御仁であって、あと少しで仕事が終わるのにも関わらず、休憩と称して「食事」の時間となるのであった。つまり休憩であれば仕事の内ということで、経費になるという、まあそんな魂胆があってのことだった。
 彼は何歳か年齢が上なので、その彼の生きがいにこちらも従わざるを得ず、結果的にはその「ただ飯」のおこぼれを拝領していたのは確かなのだが、そういったは「ただ飯」は決して旨いものではなかった。
 そのお金を支払うのは時に当社、あるいは印刷会社となるのだが、とうぜんそんな場合は印刷会社の営業担当も付き合わされて、五反田の街へと繰り出すことになる。る。
 そこでいろんな珍事が起こるのだが、一番忘れられないのが、以下の一件。
 その日も同僚を先頭に、短時間でおいしそうな料理を授かるため五反田の街を徘徊するのだが、彼は突然、こともあろうにちゃんとしたフランス料理店に入ろうとしているのである。そんな時間もお金も掛けられるはずもなく、その領収書が通るはずもないのだ。
 「ここはダメすよ」と営業担当や私がいうのを無視して、彼はどんどんとその小ジャレた店の階段を昇っていくではないか。なむさん。