不必要の必要 その六

 ちょうどコメント欄にヒデリンさんが時計のことを書いてくれたので、その返歌として、本についていくばくかを書いてみたい。
 それに今日は岡崎武志さんの『蔵書の苦しみ』を読み終わったばかりだ。
 この本は先日訪れた岡崎さんの両国のイベントで買い求めたもので、その扉にはサインとちょっとした書き込みがされている。どうやらまた版を重ねているとのことで、いかにこの「苦しみ」中毒者が多いことがうかがわれるのだ。それはもちろんいいことに違いない。
 さて、それでは本の話。このことはすでにここで書いたことがあるように気もするが、書いた本人が忘れているんだから、読んでくれた奇特な人もすでに忘却の彼方であろう。少しだけすでにツイッターで触れたことと重なるかもしれないが、そのあたりもひっくるめて、お許しを。
 まずは昔々のその昔、と最近やたらと多、昔話から始まるのだ。
 私が大学に入った年、新入生を集め合宿が行われた。この際に一つだけ覚えているのが、自分のグループのその日の担当となって先生のお話。彼はのちに学長になるのだが、それはまた別の話。
 彼はとにかく本を買うことを勧めたのだった。本は持っているだけで価値を生み出す。持っている人に影響をもたらす。本棚に置いておくだけで、その背表紙に書かれた書名を憶えるが、そんなことがなくても買うことはそれだけであなたたちにとって。意義のあることなのだと、強調するのだった。
 もちろん当時も今もぼんくら頭をてっぺんに載せている私には、その時なんのこっちゃという話だったのだが……。