不必要の必要 その二十四

 そして本は四冊から十冊へ、十冊から百冊へ…………と増えていく。しかし本が少ない時代は平和だった。いや今でも平和にもは違いない。牧歌的だったといい直してもいいかもしれない。
 たとえば本棚を作り変えるか何かで、本を平済みにしたことがある。すると目に見えるのは地の部分、つまり本の底にあたる場所だけなのだが、そことカバーの色と帯の具合を見ただけで、その当時はそれが何の本だかわかったものだ。もちろんその一冊一冊を、どこで購入したかも記憶している。
 うん、牧歌的というのはよして、本との蜜月時代とでも呼んでおこうか、そんな時期があったのは確かだ。たぶん高校から大学にいっている間(その途中も含む)のことだろう。
 しかし、どこで買ったかについては今もそれなりに有効ではある。ただしそれがあっているのかははなはだ心もとないのだが。