万博との44年ぶりの再会 その四

 (一昨日の続き)
 そしてまた東芝IHI館の映像について。そのタイトルは「希望−光と人間たち−」で、今の観点からすると、環境ビデオ、もしくはイメージビデオといった類に感じられる。そういってしまうと身もふたもないが、1970年当時は映像としてかなり斬新なモノであったのだろう。
 映像には壮大な自然と世界の人々の日常が映し出されていく。それに稀代のカメラマンの歴史的な写真が挟み込まれる。例えばロバート・キャパの「倒れる兵」。
 今回、意味が感じれたのはワルシャワカップルを捉えたあたりだった。彼らの日々にアウシュビッツの光景が挟まれる。後の解説によると、反対側では広島の映像が流れていたというが、これを観ることはできない。
 このワルシャワの若者たちは二人の時間を過ごしつつも、またデモにも参加している。ただこのデモが「官制」的なものかどうかはわからない。見ようによってはただのお祭りのパレードのようでもある。連帯の運動まではまだ時間がある。二年前のチェコスロバキアのことは記憶にあるが、そのころのポーランドの社会運動については、たぶん誰も知らない。そして18分間の映像が終わる。
 自然の人々の日常、そして挟まれる歴史的事実を表現する写真。しかし自然や日常がほぼそのままに理解されるのに対して、写真は観る者にとって既知であることを要求している。
 そして44年の時間は写真の意味をも変えてしまっている。
 はたして今ではまったく記憶に残していない中学生は、そこに何を見たのだろうか。(続きます)