北の想像力への極私的歩み その二

 ところで、勤めていた版元の媒体の短い文を除き、商業的な出版物に初めて文章を載せていただいたのが、東京創元社の『原色の想像力2』でした。
 そして今回は『北の想像力』(寿郎社)ということで、何やら想像力づいております。
 本を見ると一目瞭然なのは、装幀をしていただいのが平野甲賀さんだということ。最初に寿郎社の土肥さんから、「平野甲賀さんに頼んでみるよ」と聞いたときは、一瞬だけ誰だかわからなかった。といっても平野さんを知らなかったというわけではない。『仕事術』シリーズの著書も持っているし、ちょうどその頃展示会が開催されていたこともあり、装幀家といえば、平野さんかあるいは戸田ツトムさんあたりを思い浮かべるのだが、そういった人はいわば雲の上の人で、自分たちが作ろうとしている本とは、なんの関係もないと考えていたからだろう。
 装幀についてはそれぞれの文章がいちおう書き上がった頃だろうか、北方をイメージさせるコンスタブルかフリードリッヒといった絵画を使おうか、などと雑談していたことがあったが、それでは結局のところ印象を限定してしまうことになりかねなかった。
 そして今回、文字に潜む全方位的な訴求力に驚くことになった、というわけである。
 ちなみに『原色の想像力2』には最近、短編集『サムライ・ポテト』を出された片瀬二郎さんの大森望賞受賞作「花と少年」が所収されている。単行本で片瀬ファンになられた方はぜひこちらもご注目のほどを。