北の想像力への極私的歩み その21

 ということで、今は彼方となりにし5月23日には、すでに書いたようにブックファースト新宿店で開催された酉島さんと宮内さんと大森さんによる「わたしの東京創元社SFベスト5」に行ってきたわけだが、この書店、いままで匂わせてきたように、まさにいわゆる都心に一番近い大型書店ではあった。
 どうやら都庁の中あたりにも書店自体はあるようだが、一般大衆が行き来している店としては、ここが一番「都心」に近い存在である。もちろん大衆的・的でいえば紀伊国屋の本店、そして南店もそうなのだが、ブックファーストのすでに書いた魔境性ゆえにここは一番「都心的」なのだ。
 そんなイベント会場に私は、宮内さんの『ヨハネスブルグの天使たち』の最後の一編「北東京の子どもたち」の舞台とおぼしき、万里の長城のごとくに並ぶ団地群を望む部屋を後にして向かう。それはいわば都心への集中を感じる行程でもある。
 最寄りの駅の人もまばらなホームに着く列車に乗って、ものの20分もしないうちに新宿の過密が待っているのだ。
 東京の極北で長い時間を過ごす者にとって、この20分後の人と物と空間の集中というか収束は、刺激的でありつつ、正直疲れる体験でもある。自分のペースで移動することができないもどかしさは、歩きスマホ現象で倍加する。それをしない人とする人での空間認識の差異はこちらにとってのみ違和感となる。
 そしてまた今日もほとんど歩みは進まないのだった。