北の想像力への極私的歩み その23

 前夜の酒を脳ミソの隅に少し残しつつ、間に合うつもりで昨日に続けて出掛けたのは、東海大学文学部文芸創作学科主催による「知のコスモス・シンポジウム」というイベントで、その日の演目は「辺境の想像力―現代文学における<境界>への眼差し」という。
 つまりは昨日書いたように、『北の想像力』の刊行を発端に、その筆者と文芸創作学科の先生がたが演目を中心にご自身の見解を語り合うこと。まったく知らなかったのだが、このシンポジウムは今回でなんと281回目なのだそうだ。すごい。
 で、ちゃんとネットで調べて間に合うつもりで家を出たのだが、やはり昨日と同様に東京のひとつの中心である新宿を通過しようとして、歩きスマホ人のせいか(たぶん冤罪です)、その構内の歩みの速度がいかにも遅く、不慣れな小田急のホームに立ってから乗るはずの列車を確認していると、その瞬間にそのドアが閉まってしまったのだ。
 さて、辺境である。
 東京と呼ばれる、それも23区内の我が家もいわば東京の辺境ではあって、新宿とは空気そのものが違う。この日は昨日のその中心的体験をかすりつつ、予定していた列車とは別の便に乗り、別の辺境に向けてしばしの旅に出たわけだ。
 東海大学もまた東京とは異なる地域にありつつも、たぶん全国的には「東京の大学」と認知されていることだろう。つまりは中心経由の東京の辺境から辺境への旅である。
 私は普通とか快速とか特快とか急行とか、その意味するところの具体性を認識することのないまま、未踏の地、東海大学前駅を目指すことになる。