まだ途は半分あたり

 佐藤泰志さんの『もうひとつの朝─初期作品集』を読む。
 読み進めるにつれ、書き手が「作家」にゆっくりとなっていく過程そのものを感じさせる。
 十代の頃の作品は表現が過剰で、時代背景もダイレクトに反映している。しかしそれがまた十代なのだろう。とにかく登場人物は汗をかき、そして泳ぎが好きだ。それはまた汚れを浄化する行為なのかもしれない。
 巻末に小説の一覧が載っている。作品集と数冊の文庫などで読んだ作品にチェックを入れる。するとまだ作品数からいうと半分ぐらいしか読んでいないことがわかる。どこかの版元が未刊行作品集を出してはくれないか。そうすればたぶん別の発見をすることになるだろう。