原色の夜半過ぎ

(昨日の続き、みたいな。でもフィクションです)
 西国は天六なる処、災いありて皆口にせず、目をも向けぬとある窟ありて、名付け人とて定かならず、ただそれ「魔蛾裂祷」と知られたり。
 また今夜半過ぎたる刻にて、魑魅魍魎、よろず残りて、すぴりっつを鯨飲し、咆哮することしばし、やがては一体の物の怪、摂取したる量わきまえず、さらに幽体離脱の窮みに至たれり。
(転調)
 予想通りユー松壱号機はフリーズ状態となった。この通称ユー松号は、基幹プログラムの機弱性が以前から指摘されていて、ある種の液体摂取への対応が暴走を招くという報告が何件も提出されていたが、製造元はその自己復元能力に期待するとしてリコールを回避していた。
 だが今回の暴走は、逆に周辺環境への影響を防ぐために装備されている、自己崩壊機器のトリガーとなる可能性も出てきたのである。
 この事態に対して、ユー松号と行動を共にしていたオーキタ弐号機、通称オキタ号とトリポー参号機、通称トリサン号が、その収拾に当たるよう中央(どこじゃ)より指令が下された。
 機を見て敏なるオキタ号は、フリーズからスリープ、さらにはトランス状態に移行しつつあるユー松号へ、果敢にも局部的熱源兵器であるホカロン版を装着するという行動に出て、その任務を全うしたのだった。また知略家で有名なトリサン号は、ユー松号の背嚢に強力ホルモン剤である水羊羹を忍び込ませたのである。
 かくして、ユー松号の二足歩行機能が自力補修されると、イッヒ・メーガー四号機の出番である。すぐにユー松号の緊急時格納場所を確保し、さらに同時期に帰還場所を失っていたハッシー五号機を同伴して、手際よく呼び寄せた垂直離着陸型タクシーで、未明の大阪へ消えていったのだ。
 そしてまた、天六の平和は守られたのである。パチパチ。
 ちなみにシオシオ六号機は何もせずに、ただ見てただけ、なのだ。(で、話はノンフィクションに戻って続きます。たぶん)