マグロの教訓

 大間のマグロが初競りで一億五千万円の価格が付いたことが、マスコミを賑わしていた。ネットで確認しただけなので、明確な報道内容の違いはわからないが、取り上げ方に若干の違いがあったようだ。
 この高額な初競りの話題は今年だけでなく、たしか昨年もあった気がする。もしかするともっと前からなのかもしれない。
 もちろん実際にそれを売って儲けようという話ではない。その買主である某すしチェーンが最初からマスコミを誘導していて、その場面を記事化し宣伝することこそ目的なのである。
 築地での競りと、客に振る舞う二つの取材現場にマスコミは殺到し、いまや正月の風物詩になったかのようだ。ただ一部のマスコミは免罪符的に、市場価格への悪影響を危惧するコメントを付してはいる。しかしだったら記事にするなよ。すしチェーンの名前もしっかり出しているし。
 別のすしチェーンも同様なマスコミ露出を図っていて、それが一匹のマグロの価格を釣り上げたようだが、要はどんな高い値を付けたかなので、お互いに別のマグロを高値で買うことはない。ただどれだけ「広告費」を用意できるか、である。そして競り落とせなかった側は、間違いなく別のマグロを高値で買ったりはしない。
 厳密な意味でのパプリシティは、日常の企業活動をマスコミに登場されることで、正しいカタチでの認知度や好感度を上げることを目的としている。その点からいってもこれはすでにパブリシティではない。
 採算度外視で競り落とす行為は、通常の企業活動ではなく、ただ宣伝活動に過ぎない。そのとんでもない価格ゆえに食らいつくマスコミは、その精神のみすぼらしさを露呈されるだけだ。
 これからはそういった観点からその画面なり、その紙面を見た方がいい。
 そう、マスコミはこのようにして視聴者や読者に自身のなんたるかを教えてくれているのだね、きっと。