十年目にして初めてで、そして最後、かな。

 ここに住んで十年になる。住所は板橋区なので、とうぜん板橋区民なのだけれど、いままで板橋区立の図書館に行ったことはなかった。というのも、北区の小さな図書館の方が近いからだ。こちらだと歩いて十分ちょっと。だけど板橋区の一番近い図書館までは二十分ほど掛かるのだ。
 だからどうしても北区立の方に足が向く。しかしやはり一度は板橋区立の方にもご厄介になろうと出掛けてみた。そうそう、せっかくノートパソコンも買ったのだ、そのホームページを見るとどうやらパソコンも決まった場所では使えそうなのだ。
 と、むりくり鞄にパソコンを収納して、迷いつつも到着。でもでも、パソコンはどうやら使ったちゃダメのようだ。私はどこの情報を見たのだろうか。北区の図書館は基本的にパソコンOKなのになぁ。
 でもまあ仕方がない。閲覧場所はただ大きなテーブルがあるだけで、そのテープルも八割がた席が埋まっている。本の数に比べるとかなり狭い。利用者は私よりも年配の男性と学生風に大別されるようだ。
 パソコンが使えないので、ある小説を読みながら、それのメモを取ろうとしたけれど、あれま、ボールペンを忘れた。しょうがないので、某短編集を読み始める。しばらくちゃんと本を読んでいなかったので、リハビリである。しかし材料がよかったせいか、どんどんと進む。メモを取ろうとした小説を読んでいたら、きっと舟を漕ぎ出していたことだろう。
 そして短編を二編読み終えと外は真っ暗になっていた。一時間と少しでそこを出る。もうここに来ることはたぶんないだろう。そんなにパソコンは耳障りなのかなぁ、スマホをやっている人はいるのに。あっそうか、それも隠れてやっているわけだね。携帯電話のスイッチを切るようにとの張り紙もあったから。
 うーん、板橋区はちと住みにくい。図書館なんかに出掛けなければよかった。明日からはまた北区にこそっと使わせてもらおう。遠くの親戚より、北区の他人、である。