不必要の必要 その二十

 しかし前の二冊と違って、私の脳みそを大いにかき混ぜてくれたのが、『宇宙時代の常識』。タイトルから昨日の同じ講談社現代新書の『宇宙空間を開く』と似たような宇宙開発の解説書かな、と思ってしまったのだった。
 しかしその副題は「教養としての相対性理論」。つまり宇宙開発モノではなく、宇宙物理学モノだったのだ。読み始めた瞬間は、これは歯が立たないかも、と思ったけれど、真鍋博さんのイラストがふんだんに使われていることもあって、確信はないものの、なんとなく理解した気分にはなる。
 とくに興味深かったのは、ほぼ否定されていたエーテルという概念である。宇宙から光がやって来るのだから、たとえ真空であったとしても、なんらかの媒体が存在しなくてはならない。その名をエーテルと呼ぶことにしませう、たしかそんな感じだったと思うが、この本はそういったミステリアスな材料を使いつつ、物理法則がなんたるかを宇宙的な広がりに展開していったのだ。もし私に何らかの想像力なんてものがあったとしたら、その本に負う部分が大きいのではないかと、思う。