北の想像力への極私的歩み その十

 そういえば、いつだったか友人Kがまだ晩聲社に勤めていた頃、彼から「ちょっとウチの本買ってくれないかな」といわれたことがある。
 当時の晩聲社は、ちゃんとした本を出していて、ゆえにあまり売れないだろうと思っていたので、微力ながら応援するという意味も込めて、やや多めに購入したことがある。そのとき、なぜかすずさわ書店の書籍も扱っているというので、そちらも何冊か買っていた。
 その中の一冊が萱野茂さんの『おれの二風谷』で、この本がのちに佐々木譲さんの『白い殺戮者』を解する導きの糸のひとつとなった。
 この本には『北の想像力』で触れた「アイヌ・ライケ・ウパシ」について以外にも、萱野さんが出演したNHKの番組『わが心の旅』で、そのテーマとなったマンロー先生に関する記述もある。
 ちなみにこの本の奥付を見ると、1975年の発行で、買った本は90年発行の5刷となる。どうやらコンスタントに売れ続けていたようだ。

★写真はやはり萱野さんの著書、『アイヌの民具』(すずさわ書店)。この本は『北の想像力』のブックガイドで紹介しました。