北の想像力への極私的歩み その25

 目の前に山城、じゃなかった東海大学の建物群がありつつも、さてどこから入るのか。五月とはいえ喉はすでにカラカラの状態。もし季節が違っていたら遭難していたかも、の体で遠き頂上、じゃなかった正門を目指す。
 しかしここでも迷いはあった。というのも、目指す文学部の建物は正門とは別の入り口のほうが近いのではないか、と考えたからだ。だかもしそこが何らかの都合で閉まっていたら……。一歩一歩を絶対安全で進み、よくコケる私ゆえに、そこは迷うことなく正門をめざす。
 そしてキャンパス、いや広い。ここから目指す教室までが、昨日の新宿駅からブックファーストの距離ほどもあるように感じる。この距離感もそのひとつの例だけれど、昨日の自宅から新宿という経路が凝縮、あるいは集束の過程であるならば、本日の新宿からここまではまた散逸と拡散の過程でもあるようだ。
 キャンパスの建物群は色を落とした万博のパビリオンのごとくに距離感を吸い取っていく。しばらくして暇そうな三人の警備員に文学部のありかを尋ねる。三人は野良仕事中の農民のような言葉と指先でそれを示す。
 現場到着はちょうどイベントが始まる時間、教室の外にいた岡和田晃さんたちと簡単な挨拶を済ませて、年齢が半分以下でもかなりあまる学生たちが意外と多く陣取る教室の前のほうへとツツツーと進み座る。ここもキャンパス同様に広い。昨日のイベントでは、それぞれ腕と腕がふれあいそうな密集度だったが、ここの一人頭の空気の量は格段に多い。しかも当然だが机もある。
 ということで、演題の「辺境の想像力」をいろいろと感じさせる昨日と今日の移動と場ではあった。
 イベントの内容は、演者のひとりである東條慎生さんのブログ(Close to Wall)でくわしく紹介させています。または東海大学のホームページをご覧ください。中の写真に私もでれんとした姿で小さく写っています。