北の想像力への極私的歩み その三

おっと、一昨日書いた書名に恥ずかしい誤りがあったことに出先で気づき、帰ってきて、慌てて直しました。 でも一千数百日分にもあたるここの書き込みには、他にも数多くの間違いが埋蔵されているはず。それを見つけるといつもフギャといった気分になるので、…

北の想像力への極私的歩み その二

ところで、勤めていた版元の媒体の短い文を除き、商業的な出版物に初めて文章を載せていただいたのが、東京創元社の『原色の想像力2』でした。 そして今回は『北の想像力』(寿郎社)ということで、何やら想像力づいております。 本を見ると一目瞭然なのは…

北の想像力への極私的歩み その一

はい、『北の想像力』です。 とうとう出ました。 といっても、まだゆっくりと全国に浸透中といったところで、ネット書店には到達していません。版元は北海道は札幌の出版社である寿郎社です。 私はこの中で札幌在住の作家、佐々木譲さんの作品を論じました。…

クイズの答え

はい、昨日のクイズ(?)の正解は……、 ヘルマン・ヘッセの『ガラス玉演戯』(復刊ドットコム)でした。 『モロイ』の右にチラリと出ていたのは、「演」という字のさんずいの部分です。 タルコフスキーは日記の中で何度もこの小説に言及していて、気に入った部分…

東京オリンピックのソラリス

ネット書店の日本の古本屋で、SFマガジンの1964年10号と11月号を買う。それぞれ600円で、送料込みで1500円也。 すでに12月号から翌年の2月号までの三冊は持っていたので、これでスタニスワフ・レムの『ソラリスの陽のもとに』の最初の掲…

不思議な偶然

「日本の古本屋」で注文したフランソワーズ・アルヌールの自伝『映画が神話だった時代』が到着。あのユニークな編集で有名な通販雑誌を発行しいするカタログハウスが版元だ。 表紙の写真もなかなかいいのだが、裏表紙はなんと何日か前に紹介した「牝牛と兵隊…

60年代のホカホカ

その『ギャバンの帽子、アルヌールのコート』を読んでいて、ある文章にはたと目が停まる。そこには何十年も前に冒頭のシーンだけを鮮明に憶えていた映画の、まさにその場面が描写されていた。 その映画をテレビで観たのは小学生の頃、つまり1960年代の後…

キャラ立ちぬ

『ギャバンの帽子、アルヌールのコート』を読んでいてつとに思うのは、まったく観ていない映画もなにか懐かしさを感じることだ。ちなみにこの本で取り上げられている32本のヨーロッパ映画の中で、観たことがあると記憶している(と面倒な表現になっている…

胃袋のうずき

正月、最初に読んだ本は、ひさしぶりの川本三郎さん。二年ほど前に出ていたのだが、気づかなかった『君のいない食卓』である。 奥さんを亡くされた川本さんが、かつての日々を思い出しつつ、ふだんの食事について、たんたんと綴っていく。その中に子どもの頃…

不必要の必要 その十

ちなみに望遠鏡にはそのレンズ、または鏡の直径により分解能と呼ばれる性能が規定されていて、どんなに気象条件などが良くても、見えるものの限界がある。彼が描いたその筋はたぶんその限界を超えていたはずである。 などエラソーに書いても、スケッチの描か…

不必要の必要 その九

かくいうわけで、1967年に発行された愛しの図鑑『宇宙旅行』は、いまでは考えられないほどの、宇宙開発華やかなる時代の波にもまれるわけだが、その顕著な例をまた火星探査についての記述で見てみよう。 この図鑑では火星についてその表紙にあるようなイ…

不必要の必要 その八

さて、昨日ここで取り上げた『宇宙旅行』なのだけれど、いちおうスペックを記しておくて、発行元は小学館で、学習科学図鑑の八巻にあたるようだが、その巻数については奥付近くの広告にしか記載されてはいないようだ。 で、初版はいつなのだろうと、てっとり…

不必要の必要 その七

などということをブログに書いてみて、ふと大学に入った頃、自分はどんな本を持っていたのだろうかと、思い浮かべてみる。読んでいたか、ではなく持っていたか、なのは、昨日の新入生セミナーでの担当教授の弁から来ている。 そう、「読まなくても、まずは買…

「新しい核の時代とタルコフスキーの視線」を書きました。

季刊「メタポゾン」10号に拙文「新しい核の時代とタルコフスキーの視線」を掲載させていただきました。 これは映画監督のアンドレイ・タルコフスキーについて書いたものです。タルコフスキーというと、一般には芸術至上主義の作家とする方が多いと思われます…

林美雄さんの声で読む『市民の暦』

『市民の暦』頼りにここ何日間かやってきたけど、ずっとそうするのも、辛いのでここでひと段落。 ちなみにこの『市民の暦』とは小田実、鶴見俊輔、吉川勇一の編によるもので、一年365日の1日毎の出来事が、200人ほどの専門家によって数テーマずつ1ペ…

昼下がりの邂逅

桜台にて髪を刈りての帰り、池袋ジュンク堂に寄り、購入しは、「NOVA10」、ブルータス古本屋特集、そして初めてなる沖縄特集HANAKO。 文学の階にて、探したるはチュッチェフの関係本。ロシアの詩人にて、映画「ストーカー」最後の場面に読まれた…

第二十一条。

そういえば、かつてベストセラーとなった小学館の『日本国憲法』が話題のようである。テレビのニュースでも取り上げられていたし、何日か前の新聞にも掲載されていた。いまでもロングセラーだが、そのまま廉価版を発行するという。 ということで、書棚を探し…

知性と腕の運動に

超まったりとした、はるこん報告の途中ですが、臨時ニュースをお一つ。 たまたまアマゾンを徘徊していて、洋書なんだけど、tarkovsky Films,Stills,Polaroids&Writingsというのを発見。どうやら昨年開催されたタルコフスキー生誕80周年回顧展の図録的なもの…

あれ、何だろう。

ということを昨日書いたのだけれど、もちろん村上春樹さんは、私にとってかなり大事な作家さんであることは間違いない。 実際に『海辺のカフカ』、いや『ねじまき鳥クロニクル』ぐらいまでだったか、発売になると本屋に直行して、家に帰るまでにかなり読み進…

最初から色が付いている小説

村上春樹さんのひさしぶりの長編小説発売が話題である。しかし、なぜ話題なのか。売れるからである。なぜ売れるのか、話題になっているからである。 あっ、でも発売日そのものが話題になっていたんだね、というかパプリシティ効果を狙ったイベントと化したい…

かくも、深きあべちゃん

あべちゃんのことばかり書いていて、それが逆に宣伝になっているようで、なんともはやなのだけど、今日は別のあべちゃん、安部公房の話。 熱心なファンであったわけではないけれど、学生時代を中心に、というともう三十年以上も前にそれなりに読んでいたのだ…

爆心地へのいざない

今年広島で開催れるSF大会のサイト「こいこんblog」のSF大全に、小田実の小説『HIROSHIMA』の紹介文を掲載させていただきました。 かなり個性的な小説なので、私の筆力ではその魅力をちゃんと伝えることができたのかはなはだ不安ではありま…

時を隔てて、私を射る本

昨日の夕刊の社会面で、経済学者であり、アジア学者でもあり、なによりも民衆の側からの報告者であった村井吉敬さんが亡くなったことを知った。 70年代の最後の頃だろうか、友人の紹介でほんの少しだけお目に掛かったことがある。それは上智大学の構内だっ…

さよなら、『ぼっけもん』、早すぎるぜ

昨夜のネットのニュースで、いわしげ孝さんが亡くなったことを知る。私にとっては『ぼっけもん』の作者である岩重孝さん、である。いわしげさんと書かれていたので、一瞬誰のことかわからなかった。まだ五八歳だという。若過ぎる。 いつごろだろうか、学生時…

モモンジ探して幾百里。

ということで、ジュンク堂は諦めて、来たときはスルーしていたリブロを捜索。というのも、私はジュンク堂へは、いつも西武百貨店の地下食品売り場の横を走る通路を使い、リブロ経由で行くのだった。すんません。 しかし、リブロの広々とした雑誌コーナーに影…

もうポイントは付かない。

というわけで、ダイヤ的には一時間ほど、私的には20分ほど遅れの、快速改め各駅停車新宿行に乗ったのだった。 目指すは池袋のジュンク堂である。もちろん本を買いに行くわけだが、その前のことを少し書いておこう。 実は少し前から何冊か欲しい本があったの…

ああ、二冊が深く静かに潜航中。

昨日、ボーイング707とか787についてトロトロと書いていて、「ふと」思い出したのが、やっぱりサブマリン707、っていうか、少し前にもそのプラモデルとやらに関して書いていたよね。 でも今回の「ふと」はそれとは違って707の兄弟分たちのこと、…

深夜の捜索

何の気なしに、海野十三の『深夜の市長』を読み始めたのだけれど、途中で設定が似た短編をどこかで読んだ気がして、書棚をグルグル見回している。 戦前の小説なんてほとんど読んでいないので、何かのアンソロジーかとも思うのだけど、期待したいくつかには見…

あおき、みずくさ、ひぐちいちよう

今日は会田誠展をちょっと脇に置いて、また別の話。 深夜、ツレが観たいというので、テレビの「恋する一葉」という番組に付き合った。一葉というのは樋口一葉のことで、彼女をモデルにした芝居を大学の演劇科の女の子たちが演じるまでを、ドキュメントタッチ…

切手を買う少年の顔

小説『海炭市叙景』のことを調べたくてネット検索したら、ズラリと並ぶのは映画の方ばかり。映像メディアの力の強さというか、文字メディアの弱さというべきか。 映画を観たことが小説を読むきっかけになればとも思う。だけどやはり映像の印象ってとても強く…